■連邦の概要
隔絶された極寒地域。人々は絶望した面持ちで天を仰ぐ――。名 | 場所・特徴 | 都市 |
---|---|---|
狂気 | 左翼-渓谷・凍土 | 王都ルーナ=プラナ 副都ルーナ=ノア |
国教・政治 | 統治者 | 民族 |
絶対王政 九竜信仰 |
女王アリアドネ ゾイ王家 |
ケアド人 -スアス派 -トレアン派 -無信教派 |
正式名称は「ガルタフトおよび五竜伯からなる連邦」。 ソ・ラスナ山脈以東、一年を通して雪に覆われた〈左翼〉に位置する厳冬の大国。国全体が 〔牙派〕 の人間。 北部は極寒の大監獄、かろうじて人が暮らせる南域は寒帯。 その中でひときわ美しい瑠璃花「ルアハの花」 が強く咲き誇り 〔黒翼〕 が植えた聖花として神聖視 されている。 国家元首はアリアドネ・ゾイ女王、元は反王党派の筆頭だった人物。だが現在はなぜか王位に就き国王集権の絶対王政を敷いている。 国民の血統は共和国と同じケアド人。 すべて押し流す水のような、あらゆる刻の止まった氷のような国。
**ルアハの花
王都が位置する渓谷には芳しい青き花々が咲き乱れる。 これらは「ルアハの花」または「褒美花」と愛され、厳寒に包まれた凍原を凜と飾る。 国花・ルアハの花には逸話がある。 昔々連邦国が小さな国だった頃、国王に美しい娘がいたと言う。娘は渓谷を彩る花々を慈しみ、彼女もまた瑠璃花と親しまれ愛された。 そんな時だ。ある男が功績を立て王に褒美問われた。すると男は王の娘を指差し「あなたの青いお花(娘さん)をください」と告げた。 かくしてこの花は褒美を意味する「ルアハ」 という名で呼ばれるようになった。※他国では「ネモフィラの花」と呼ばれている。
**宗教観
大陸には竜の災厄から大陸を救った、角を持つ七匹の翼獣を「七角」と呼ぶ文化がある。 神事も司る連邦国王家は大地神・黒翼メルギラを善なる主神に据え、対となる天空神・白翼フルティラを悪神として、二項対立を軸とした教義を形成した。二神角とそれに連なる五匹の翼角を崇めるこの信仰は「七角信仰」と呼ばれ 、大陸各地へ広がり、世界の宗教的土台となった。 類するものは公国の 〔赤角信仰〕 、帝国の青角信仰、共和国の大陸竜信仰などが挙げられる。 なお、この信仰を発端に、本編世界情勢を形作る 〔角牙争乱〕 が生まれた。
**北森独立地域
極寒地・北森は黒角イーノクの独立支配地帯。 監獄地帯には特異な障壁が張り巡らされ女王の権力も届かない 。内部は基本的に自由であるものの、囚人は住居区画が分けられ、物々交換が基本である。
■政を担う二大派閥
連邦内の特徴は国内で大きく分裂した 〔宗教派閥〕 。 ・黒翼メルギラを崇める王党派 ・白翼フルティラを崇める反王党派 ・どちらにも属さぬ中立派 主に上記二派閥が終わりの見えぬ政権争いに昼夜明け暮れる。
■派閥の決定とは■ 生まれた土地によって強制的に定まる。自ら望んで変えることは困難。■生業とは■ 派閥ごとに役割分担がある。政治や神事を 〔黒翼・王党派〕 、軍事や汚れ仕事を 〔白翼・反王党派〕 、と国法で決まっている。■中立派閥とは■ 黒翼、白翼以外の神を信じる、もしくは神を信じない人達のこと。一定の手続きを取ればこの派閥へ離脱可。だがそうなった場合、市民権がない・自由に国外へ移動出来ない・国内に留まる場合は生涯農業に関わって暮らす、など思想以外の権利に制限が掛かる。 また、一度でも中立派閥へ移動すると両派閥へは戻れない。
**獣伯領と七戒律
連邦は九都市に分かれ、それぞれ黒翼・白翼を祀る。 王都を黒翼・王党派、副都を白翼・反王党派が治め、その他五区域を治める中心的役人を「獣伯」と呼ぶ。彼らは総称して「五獣伯」と呼ばれる。 ※双獣伯の金銀領のみ中立地 とされいかなる派閥争いも許されない。 獣伯制度と七角信仰には、教皇の定めた七戒律が存在する。 -- 戒律内容 -- 神事は黒翼を主神とする王党派が担っているので、王党派に有利な戒律となっている点にも注目したい。 たとえば黒翼眷属である青獣伯領で生まれた市民は、青腹と黒翼を信仰し、政治や神事に深く関わる人生を送る。 獣伯の階級は七竜の位階に準じ、上から青獣伯、双獣伯、茶獣伯、紫獣伯、赤獣伯と続く。 また、選王権とは国王を選出する権利を指し、投票によって選ばれた王党派出身の人間が国王となる。
**五獣伯と支配域(金銀は同一として数える)
支配域 | 特徴 長 階級 |
派閥 信仰 |
都市 専門業 |
選王権 |
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王都 |
渓谷 国王 王家 |
王党派 黒翼 |
王都ルーナ=プラナ 神官業・政治・婚礼 |
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副都 |
竜骨 軍総裁 貴族 |
反王党派 白翼 |
副都ルーナ=ノア 軍事・葬儀・暗殺業 |
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青獣伯領 |
海岸 青獣伯 公爵 |
王党派 黒・青腹 |
海都 海軍・軽&海洋業 |
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双獣伯領 |
内陸 双獣伯 侯爵 |
反王党派 白・銀背 |
遊都リリト=リラ 商業都市・高級娯楽 |
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双獣伯領 |
地下 双獣伯 侯爵 |
絶対中立地 黒・金背 |
学都クノク=アイル 学術都市・魔法養成・農業 |
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茶獣伯領 |
森林 茶獣伯 伯爵 |
王党派&中立 黒・茶首 |
豊都 農業全般・山林業 |
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紫獣伯領 |
天空 紫獣伯 子爵 |
反王党派 白・紫爪 |
空都カタラクタ 空軍・武器生産・軍事研究 |
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赤獣伯領 |
火山 赤獣伯 男爵 |
反王党派 白・赤尾 |
軍都 陸軍・重工業・金鉱業 |
連邦国の風土文化
■おおまかな地域区分
厳しい環境では祈りが活力だった。資源の乏しい地では魔力が生きる術だった。 絶冬の地〈左翼〉での生活を可能にしたのは魔法だった。 大小の領邦国が連合して出来た連邦国では地方色が強く専制君主制となった今にも受け継がれている。信仰の聖地とされる「王都」 軍事の統括地である「副都」 学術研究に傾倒した「学都」 鍛冶や紡績中心の「軍都」 ――など八つの多彩な領土が大別して二派閥に分かれ土地ごと争っている。
文明の発展は往往にして生死と直接的な関わりを持つ。 殊に寒冷地へ追いやられた、白翼を主神とする反王党派にとって魔法技術の向上は死活問題 であった。 一方黒翼を主神として長らくこの地を治めてきた王党派は比較的暖かく恵まれた地に住み 農耕や漁へ従事して食糧に困ることも少なかった。
**東西の地域
【東方】 には青獣伯領があり貿易や海軍が盛んとなっている。北東の港は一年中凍っており民間人はほとんど住まない。主に海軍が住まい、寒冷地でしか出来ない研究が進められている。【南東】 も青獣伯領の一部だが、海岸沿いには漁村が並び、貴重な不凍港として食糧供給を担う。【西方】 は赤獣伯領、紫獣伯領が存在。大陸最大のソ・ラスナ山脈が連なり西方諸国と当連邦を分断。諸外国と接するため軍関係者が多く駐在し陸軍、空軍、魔法軍の本拠地も置かれる。雪山系の山脈沿いは寒さが厳しく不毛の地であるため反王党派居住区とされる。
**中央地域
【中央】 には王都、双獣伯領が存在。王都は何かから守られるように周囲を獣伯領に囲まれ渓流で育まれたルアハの花が咲き乱れる。また、王都の上に位置する双獣伯領土は保温・防護を兼ねる魔法壁を張り、北から流れ込む冷風を防ぐ大事な役割がある。そのお陰で王都は快適な生活が保証されている。
**南北の地域
【南方】 は茶獣伯領が存在。比較的暖かく国内唯一の農耕地帯として重要な土地とされる。引退後の別荘地としても人気が高いが、土地には限りがあるため必然的に王党派や市民が優先される。【北方】 は監獄地。一度この地へ入れば国王や獣伯は干渉出来ず、黒角イーノクの支配下となる。大陸一寒さが厳しい地域であり年中雪に覆われているため、黒角の保護なしでは生命は存在できず、かつては罪人や赤児の捨て山とされていた。現在も自らこの地へ住もうとする民間人は存在しない。
■王都と周辺七都の概要
王都、副都、五竜伯領 七地域は強い特色を持ち、各々与えられた役目をこなしている。ここでは領土ごとに詳しい解説を入れる。
派閥 | 都市 | 特徴 |
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王 党 派 | 王都 | ルーナ=プラナ、別名「月満つ都」の王党派拠点は何千年も掛けて雪解け水に抉りられて成立した渓谷に存在する。青空を映したようなルアハの花が咲き乱れる様は圧巻だろう。 |
海都 | 青獣伯領は海沿いに細長く位置し、貿易、船舶業、海軍業などを担う。 凪のように穏やかな人が多いが、海軍拠点の一つでもあるため青領兵は高い戦闘能力を誇り、海岸線に決して破られたことのない鉄壁の守りを展開している。 | |
豊都 | 茶獣伯領は南方の巨大農耕地帯を所持し、食糧自給の中心という重要な役目を果たしている。住人のほとんどは農耕をしながらのどかな自然に生きており生活満足度は国内随一。 |
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反 王 党 派 | 副都 | ルーナ=ノア、別名「月なき都」の反王党派拠点は軍事総監が駐在する要塞軍事都市である。 地理的に竜頭争奪区と国境線が近くいつ何時隣国が攻め込んできても対処出来るよう、陸軍空軍に加え金竜伯領で育成されたエリート魔法軍が防備を固めている。 |
学都 | 双獣伯領は王都北方に位置し中立な学び屋として 〔魔法〕 や政治を動かす人材育成に努める。治めるは銀竜伯領と同じ双竜伯。 学都クノク=アイルは古めかしいデザインの図書館群や大学、研究所が立ち並び、どこか時代錯誤な印象すら受ける。 |
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遊都 | 双獣伯領は格式高い店が立ち並ぶ高級街である一方、花街を有する遊都として煌びやかな夜の街を演出する。治めるは学都と同じ双竜伯。 海都と距離が近く貿易関係の人間をもてなすことで発展したが、異国情緒に溢れる様子は遊都リリト=リラが学都同様に特別な地であることを示す。 |
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空都 | 紫獣伯領は大陸唯一の空軍基地を誇る空都カタラクタとして軍事力の一端を担う。ここでは山脈西の麓で採れる資源を利用して大規模な武器開発を行い、隣接した学都や軍都と手を組み強力な兵器の研究している。 |
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軍都 | 赤獣伯領は大部分が各軍の駐屯地である。領内には副都を有し緊急時は軍事総監から直接命令が下るという。 また、竜頭争奪区の国境線に直接面し領土全体が基地化。恒常的に危険に晒されているせいか盲目な信仰過激派が多い。 |
連邦の魔法
■連邦国が誇る独自技術
ガルタフト連邦国の秀でた文明基盤、魔法に類する技術。 錬金術に似たこの独自技術を国の頭文字を取って「ガル」と呼ぶ。 鉄から金を創り出す等、別の物質を創り出すことが可能 だ。
この技術は元からある物体を作り替えるだけである。無から有を産み出すことは出来ない。 極寒の地で彼らは火を灯し、熱を生み出し、見捨てられた地で生き延び続けた。 強すぎる力は呪いの如し。魔法が一般的でないスマラグド大陸においてこれらは恐怖の対象である。 だがこれは過酷な環境で命を繋ぐために先人達が苦肉の策で編み出した生きる知恵だったのだ、ということを忘れてはならない。
**牙使い-キバツカイ-
魔術の始まりは 〔ゾイ王家〕 であった。王家の人間は他所の土地へ行っても支障なくこの力を使用出来る 。 彼らは魔法において絶対的な力を誇る立場だったのだ。 侵略戦争中は敵軍撃退に大いに役立ったと記録が残されている。 その絶大な力を恐れた諸外国はガルを「呪い」と呼び、ガルの使用者、つまり魔術師を「牙使い」と畏れた。 なおこの力は 〔竜〕 に与する 〔血族〕 由来の力だと考えられ、彼らの別名・牙族にちなみ名付けられた。
**魔牙機 -マガキ-とは
略して「牙機」。魔法で動くものは多くあれど殊に魔法ガルを原動力として動く「機械」「装置」を指す科学の延長技術。 機械の基本構造は帝国で発明されたものと同じだが、連邦国の技術に合わせて改良を重ねられた結果、武器から生活用品まで多岐に渡り存在している。魔牙機は国民の生活を支える重要なもの であり、たとえば灯り、たとえば交通、たとえば防災と生活に溶け込み国民の生活を支えている。 しかし強力な力は毒にもなり得、使用者を蝕んでいく。 そのため魔牙機は「牙使い」の中でも、政府公認許可証である特定の「紋」を持つ者だけが操作可能と法律で定められている。 装置の稼働には牙玉および牙章を用いることから、魔法の牙の機械、「魔牙機」と名付けられた。 転じて、そこから「禍き-マガキ-」「マガイモノ」と揶揄されることもある。
■特性と危険
魔法ガルは非常に有用な技術だが、大きな難点が四つある。・一つ、「牙玉」およびそれを加工した「牙章」なしに発動しないこと。 ・二つ、使用者の生命エネルギーを利用するため過度な使用は死を招くこと。 ・三つ、その力を国外へ持ち出せないこと。 ・四つ、使用者は高度な科学知識を備えていなければならないこと。 一般市民の単独使用は禁じられ、連邦国では三人一組制度が徹底されている。 また王族以外の使用者がひとたび連邦国領地外へ出ると魔法が使えなくなる。
**牙玉と牙章
「牙玉」とは魔力を増幅させる特殊媒体である。 使い手はこれを好みの錬金術師に加工してもらう。加工が終わった牙玉は「牙章」 と呼ばれ魔法使用許可証として公的効力を持つ ようになる。 牙玉は扱い上は単なる増幅装置であるため、元々魔法適性のない者は牙玉を得たところで魔法を使うことは出来ない。 翻って、力の強い者は稀に牙玉なしでガルを使用できるという。 そんな人物は数世紀に一人産まれるかどうかだが本編では運よく 〔第三王子ミハリス〕 が該当。 なお魔法の源「牙玉」の製作はゾイ王家のみに許された行為であり、技術も秘匿される。 これは国内で王党派・反王党派の身分格差を生み出す要因にもなっている。
**牙章と刻印
牙章があれば国内様々に配置された「魔牙機」を扱うことが出来る。 だが、完成したばかりの牙章にはまだ使用資格がない。 ガル使いは牙章が出来上がると、今度は学都カタラクタを訪れ、資格証明となる「紋」を表面に刻む。 つまり紋の数が多いほど社会的に認められた人物ということになる。
**異能特性
建築に秀でた者、農業に秀でた者、武器生成に秀でた者など、牙使いは各方面での向き不向き がある。 その中で強い力を持つ使い手は殊にある方面へ特化した才能が現われることがある。 これを連邦国では「異能持ち」を呼ぶ。 中でも抜群の知名度を誇るのが「アルケミー」だが、この異能者は前線で戦う確率が高く目に付き易いことが知名度に貢献していると考えられる。
名称 | 読み方 | 特性 | 人口 | 使い手 |
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Alchemy | アルケミー | あらゆる物質を破壊・創造することが出来る | 多い | ミハリス |
Infection | インフェクション | 己の感情や思考を染み渡らせ他者の思考を侵食する | 一人 | 女王 |
Moment | モーメント | 閃きや直感力、記憶力に優れておりAEに似た第六感を持つ | 多い | |
Transient | トランシェント | 誰にでも好かれ心の間合いへ滑り込むことに卓越する | 少数 | バラウール |
Canceling | アイソレーター | 相手のガルで引き起こされた出来事を遮断する | 数人 | キアラン |
Sensor | センサー | ガルの痕跡や発動を感知する | 一人 | 不明 |
連邦の民族文化
■月と星
スアス派は月である。トレアン派は星である。 ケアド人は血統で分類される大陸三人種のひとつ である。 大陸三人種〕 とはすなわち:ミアナハ人、オルド人、ケアド人。
連邦人口の大多数は 〔ケアド人〕 の血統だが、連邦に限っては派閥で分類する ことが多い。 王党派は月、反王党派は星に喩えられる。 煌めく星々はいくつも点在するが「月(王党派)」と名が付くものはひとつしかない。 月は昼間は見えないだけで元から天にあったもの、つまり人間の中に潜む「本能」 と考えられる。 一方、名も無きトレアン派は生まれたての未知なる「星々(トレアン派)」だ。 可能性と推進力を持つと共に、彼方に散っているため人々が手ずから集めなければならない。 それがトレアン派の行う「知識を集約し、新たなものを創り出す」 という意味だ。
■王党派
連邦最大規模の派閥。筆頭は黒翼を信奉するゾイ王家。 彼らの教義には善神・黒翼と悪神・白翼がおり、善神の洗礼を受けし現王家の統治を支持している。 彼らは「いずれ竜を討つだろう王党派血統こそ真の王族に相応しい」と考えるため、竜を同胞とする反王党派に厳しい目を向ける。主神は善なる大地神角メルギラ 。 礼儀正しく平和を好み、自然を愛する人々が多い(と自負している)。
**神官業、政治、婚礼
王家は 〔七角信仰〕 の頂点にいる。同じくそれに属する王党派も神に仕えることを使命としている。 また政教一致を取る連邦において神官業を司るということは政へ関与することと同じ であり、政治も表向きは王党派に一任される。 このように王党派は明るく輝かしい世界であり、汚れ仕事に携わらないのが原則とされている。
**正統ゆえの優位
表向き王党派の人間は反王党派に対して位階が上とされる。 しかし軍事力を握るのは反王党派。実質的に両者の権力関係はほぼ同等 となる。ゆえに王朝交代が頻繁に行われ、その度に首都と副都が目まぐるしく入れ替わった。 しかし後に 〔議会制〕 へ移行すると首都はルーナ=プラナ、副都はルーナ=ノアと以後変更のないよう決定が下される。 それは反王党派アリアドネ女王治世下である現在も変わらず、首都には今もってルアハの花が咲き乱れている。
■反王党派・異端児
第二規模の派閥として白翼を主神とする反王党派が存在する。筆頭は副都の軍事総監。 ゾイ王家の統治に異議を唱える者が多数派。女王統治に賛同している人々も多い。主神は白き翼の天空神角フルティラ。 悪神に定める対象はおらず、すべての中で白翼が一番尊い、と認識している。よって黒翼=悪とはしていない。意外と寛容。 向上心と支配欲が強く知識に対して執着を見せる傾向が強い。 また魔法使用者が多いため、自らを「竜の力を行使する我々は優秀な人種である」と考え、王党派へ反発していく。
**軍事、暗殺業、葬儀
特殊能力の高さから軍事へ傾倒し汚れ仕事や暗殺業に携わる。 表向き王党派が政治を動かしているが、軍事を担うということは力を得ること、ひいては国庫を握ることへ繋がる 。 彼らは裏で脅しや軍事力をちらつかせて意のままに政治を動かそうとしてきた。
**進歩と共に歩む
悪い側面ばかり目立つ反王党派だが、彼らこそ連邦発展の立役者だ。 連邦の文化レベルが上昇した理由のひとつに 〔ガル〕 という特殊魔法技術がある。 それを使用し発展させのは反王党派なのである。 なぜ彼らが? その疑問に答えは用意されていないが、彼らは十二分に国へ貢献してきた。だからこそ反王党派の人々は「我々は王位に就く権利がある」と主張する。
ガルタフト連邦国の歩み
■度重なる政権交代
政権交代と内乱はこの国の常だった。 すべての始まりはゾイ王家(王党派)だった。 しかし魔法が生み出されると、それらを専門に扱う武家トレアン系民族 が勢力を強める。
**王家の興亡と衰退時代
連邦は政教一致政策を取る宗教大国だ。 決議の指針は「七角信仰」、古き竜を中心とした宗教観に従い国政が定まる。当国の歴史は古く、かつては 〔黒翼メルギラ〕 を祀ったゾイ王家による集権政治で成り立っていた。 いつしか 〔黒翼・王党派〕 中心の首都+六地域の分割統治 が始まるも 〔白翼・反王党派〕 勢力が台頭すると両派の王朝支配が交互に続く。 二つの勢力は拮抗し軍事力で劣る王家が弱体の一途を辿る中、他国の侵略により両派は妥協案として和平合意、五人の竜大伯による「議会」が発足した。 これにより王家の政治的意義は急速に弱まる。
**議会腐敗と粛正の時代
しばらくして侵略戦争の危機の中、再び王家主導の集権国家へ戻った連邦だったが、度重なる戦いはいつの間にか軍事権を握る反王党派の権威を増大 させていた。 かくして腐敗した議会と反王党派による傀儡政治が始まり、アリアドネ姫の内乱を経てついに連邦史上初の絶対王政 が開始された。 結局、国王を否定する歴史を積み重ね反王党派が勝利するも、頭目アリアドネ女王もまた王家を名乗り最高権力を行使するようになったとはなんとも皮肉な結末である。
**王党派V.S.反王党派の派閥時代
反王党派が力を付けると、宗教的な意義が強まり、神殿を預かる王家の存在が重要となった。 対して反王党派も、七角の一人「白翼」を引き合いに出して現存権力へ対抗した。 彼らは徐々に王宮や黒翼派まで勢力を広めていったが先代・黒狼王レヴァンの前の時代から急速に内部腐敗が進む 。 それを愁うた王家が議会粛正を試みると、議会を支配していた汚職層が払拭されるにつれ、王家も再び権威を取り戻していった。 すると先代の黒狼王レヴァンはこれに乗じて議会の地位を下げて地方権力を弱体化。 侵略戦争へ迅速に対応するため強力な中央集権国家へ移行させ、他国と対等に渡り合う時代 が訪れた。 しかし議会や地方は未だにそれなりの力があり、当時は地方分権政治から中央集権政治への過渡期にあたる。 かくして力を奪われた反王党派による政権交代の気風が高まり、女王が誕生する切っ掛けを孕む大規模な反乱の土壌となった。
■女王戴冠と絶対王政へ
長らく政治の片翼を担っていたのは地方を治める五獣伯たちだった。二百年以上もの間、連邦政治は国王と議会の両輪で進められて来たのだ。 だがレヴァン先王以降少しずつ削れられていった議会の権威。 それはアリアドネ女王が戴冠したことで完全に失墜した。
**反乱と大監獄 議会の力を奪われた者らは憤っていた。 そこへ現女王アリアドネが反乱軍を募ると議会内でも王家派と反乱軍派へ分裂し一部の獣伯は王家を裏切りアリアドネへ迎合した。 けれど彼女が戴冠すると、女王は残るすべての特権を議会から奪い、絶対王政を築いた。 反乱軍へ加担した数人の竜伯は「北森」とよばれる監獄へ今も投獄されている。 また元王家に従い続けた青・金・茶伯は城の中で幽閉状態 にあるという。
**魔法による下克上
連邦において、魔法技術ガルは、善神たる黒翼信仰の頂点に立つ王族や神官だけが使用を許されていた。 ガルは白翼フルティラの力を借りた技術であり悪の力である、悪神の誘惑に打ち勝つことが出来る強い心を持つ者でなければ使用してはならない と信じられていたからだ。 しかし高度な技術が浸透し利便性に国民が気付くと、技術独占に対する抗議運動が勃発する。 すると権利を独占したい神官側と、隣国〔ミアナハ神国〕 が力を付けている時期に国内発展を妨げることを愚かと考えたゾイ王家は一時対立。 国王が反対を押し切って技術の一般解放を行うと、以後連邦はおおいに栄えた。 だが、まもなくして神官達が恐れていた事態が起きる。民間の優れたガルの使用者こと「牙使い」達が自らの優越性を唱え暴走をはじめた のだ。 政府当局と対立した牙使いたちは自らの意見に説得力をもたせるため、また後ろ盾を得るために宗教的寄りどころを求めた。 そこで悪神とされる白翼フルティラを引っ張り出し、異端の白翼信仰へ走った。かくして白翼フルティラは表舞台へ引きずり出された。
**黒狼王治世の反乱
元暦xxx年、 名君と知られた黒狼王レヴァンが反乱軍に謀殺される。 跡継ぎの長兄リガスはその数年前に内乱で死亡、次男ゲートも女王に位を奪われ投獄される。 よって上から三番目の現女王が王位につき国内で迫害を受けていた末弟 〔ミハリス〕 第三王子を呼び戻した。 末弟はとある理由から国を出て大陸を旅して回っていたが内乱中も不在。彼は中立の立場を貫き反乱軍の誘いにも乗らなかった。しかし女王はかの末弟を愛していたため執拗に側へ置きたがった。 ――それが、大きな過ちだったと気付かずに。
連邦国の宗教観
■竜は中心概念
連邦国では「七角信仰」という拝一神教が国の決議に関わってくる。七角信仰とは、二匹の神角と五翼角を併せた、角を持つ七匹の神々を祀る宗教観のこと。大昔に世界を管理していた古き竜を祀り、黒翼と白翼の二項対立を思想の中心へ据える信仰 である。
本来、白と黒は「竜」そのものではなかった。しかし人は天上の存在を総じて「竜」と呼ぶことにした。 該当思想の中で、黒と白は人の形を与えられ、それぞれ女神・男神と見なされる。 なお学都及び遊都は中立地帯であり、所属に関係なく議論を交わすことが許されている。
**国内派閥別
信仰七角 | 派閥 | 属性 | 所属 | 中心地 |
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〔黒翼メルギラ〕 | 〔王党派〕 | 善神・女神 | 青腹、茶首、金背 | 王都ルーナ=プラナ |
〔白翼フルティラ〕 | 〔反王党派〕 | 悪神・男神 | 銀背、紫爪、赤尾 | 副都ルーナ=ノア |
親戚関係の宗教
大陸にはこれに類した宗教がいくつか存在する。・赤角ハームを崇めるミアナハ公国の赤角信仰 ・大陸そのものを崇めるケアド共和国の「大陸竜信仰」 ・竜が人の似姿を取ったとされる青年を崇める竜頭の「角笛信仰」 大陸に存在する宗教はケアド共和国が発祥であり凡て唯一つの思想から分岐した親戚関係にあるとみなされる。 しかし公国赤角信仰と連邦国九竜信仰は長らく対立。そのせいで公国では七角信仰は禁教とされている。
■再現されし二神角
七角の存在は大陸が衰退した暗黒時代以降久しく忘れ去られていた。 だがある時代、ケアド共和国の学者クイグ〈5〉が発掘した資料を再編。 のちの人々によって現在の拝一神教の形へ体系化された。
当初これらは信仰というより思想に近く、多彩な神が哲学や人生観を語り聞かせる寓話的要素が強かった 。 神や竜そのものに善悪の定義付けはされていなかったのだ。 だが連邦国が黒翼を善神、白翼を悪神と定めると、現在まで激化している派閥争いの発端が築かれた。
**白翼信仰、異端から表舞台へ
かつて白き翼――男神信仰は異端だった。 大陸が出来たばかりの頃、北東地域には「黒翼が白翼を粛清した」という伝承が広く信じられてたため、白翼を敬うことは御法度だったのだ。 しかし次第に黒翼メルギラが姿を消す。 すると九竜信仰も段々と薄れゆき、いつしか竜の存在そのものが文献から消えていく。 これについてクイグは、「メルギラのある言葉が統治者達にとって都合が悪かったため人々が意図的に抹消した」と推論を立てている。
**大陸衰退時代
時は流れ、暗黒時代が訪れる。 この頃、民衆の間で黒翼メルギラ信仰がにわかに再熱した。人々は黒翼の言葉を無視したことを懺悔し悔い改めなければ、大陸が凍り付くと震え上がった。 こうして黒翼への信仰が復活すると、対となる白翼も掘り起こされた 。 憎むべき我欲の代弁者として、善神が打ち倒すべき悪役として、フルティラを崇めることは再び異端とされた。 しかし彼は進化・科学を司る神でもある。白翼の存在が蘇ることで古の高度な文明も蘇り、連邦は繁栄への道を歩み始めた。