Aitheascal World神話編・神託の地

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• 神託の地　 人あらざる者　 異能　 金のまなこ

はじめにこの世界を治めんとした生き物は一匹のドラゴンだった――。
世界はある日、賢き竜を産み落とした。彼の名はスマラグド――緑の石。煌めく鱗をもった竜はなぜか世界を管理するようになった。
彼は無秩序な世界を調律し、長き平和をもたらしたという。竜の力によって育まれたその世界はいつしかアハシュカル（神託の地）と呼ばれるようになった。

真に存在した世界ではあるが、竜による秩序が崩壊した後、次第に忘れ去られていく運命にある。そうして天上世界は「神話」や「伝承」といった幻想の舞台へその領域を移していくのだった。

神託の地に存在する竜種は一体だけだと言われる。
世界が在ったとき、竜はまだ誕生しておらず、生命は無秩序に存在していた。その中で目覚めた彼は崩壊寸前の世界の惨状を嘆き、安寧をもたらすための部下として、白と黒、翼の生えた生き物を二体創りだした。すると今度は白と黒が、己に似せて五体の部下を創りだした。こうして唯一竜と七体の羽翼獣が世界中へ散ることとなった。

眷属と血牙族

• 幻獣たち　 眷属とは　 血牙族とは　 ▲

人あらざるもの

子孫関係は、竜＞翼獣（翼）＞眷属（角）＞血牙族（牙）の順である。
竜が翼獣を作ったあと、彼の子らは己が力を込めて異形の子孫を各々一匹ずつ作った。すると今度は異形から人型の子孫が生まれ落ちた。
異形たる眷属は「角」を持ち、亜人たる血牙族は「牙」を持つ。眷属や血牙族は竜や翼獣に近しい存在で、竜の意志を伝え歩き楽園の一端を築く役目を担っていた。しかし竜や翼獣が消えていくに従い彼らも姿を消していった。
「血牙族の長」は親たる眷属により選ばれるのが一般的である。

竜眷属、宵の角

眷属とは一般的に、幻獣や異形と呼ばれる部類の存在である。 
獣型である彼らは〔各の羽翼獣〕 が我が身の分身として意図的に創り出した生き物だ。神代の刻が終わり、竜が姿を消す少し前に弱り切った羽翼獣達と代替わりした。
かつては同時に八体の眷属が存在していた時期もあったが、本編軸で確認出来るのは赤青黒の三種族のみである。

眷属はいわば竜や羽翼獣たちがバックアップとして創った己の分身である。
作った理由に関しては諸説憶測あるが、最も有力な説は、「いつしか訪れる滅びを悟った羽翼獣たちが、竜亡き後の世界的混乱を収めるべく後世へ力を残そうとした」である。
性格や能力に差異があるため、羽翼獣と眷属は別個の存在として捉えられるも、特に強い力を持つ白翼・黒翼に関してはこの限りではない。彼らは神話の終わりに魂ごと転生して眷属によく似た個体となった。
よって黒翼と白翼、この二体だけは同一人物と把握されている。（しかし羽翼獣だった頃の記憶はない模様）

眷属だけの力

眷属は他生命へ異能の貸与を行うことが可能である。
この行為は通称「恩寵」と呼ばれるが、各個体ごとに恩寵付与可能な人数は決まっており、力の強い個体ほど多くの者へ異能を与えることが出来る。

判明している眷属一覧

眷属の生態、自我の芽生え
各個体は羽翼獣と異なる人格を持ち、力を受け継ぐ前の記憶もない。
時の経過と共に明確な自我を形成し、自分なりの目的に沿って暮らすようになっていく。そんな彼らが最優先すべきことは、竜が堕ちた時に受けた「大陸の存続」という使命であり、必要とあらば無慈悲な殺生も厭わぬため、人間とは一線を画す存在と認識される。
仲良くなれば特別な力を分け与えてくれるかもしれないが近づく際には十分に注意が必要である。

竜血族、宵の牙

血牙族は、ヒトによく似た亜人へ分類される。
彼らは当時飛躍的に発達しつつあった人間と翼獣との仲介役として自然発生し、人界へ深く関わっていく。血牙族は親たる眷属の補佐を主とし、長となるべき者も眷属によって選ばれる。
不老長寿である彼らは人と交わる内にヒトと見分けが付かなくなるが、血が濃く現れた者は特異な力を発現させて竜返りとして畏れられた。

眷属が生まれてまもなく自然発生した亜人。かつては他生物と竜・羽翼の仲立ちをする中間管理職的存在だった。
姿形や社会生活こそ人間にそっくりだが強靱な肉体を持ち血牙族毎に独自の異能を誇る。
その存在が世界へ根ざし、他種族との交配が進む度、人のそれに近づいた。創世記後期には外見だけで人間と区別することは不可能だったという。 
彼らは「神の御使い」として敬われていたが、太古の時代――ある事件を境に血牙族は続々と滅ぼされた（前日譚リベルタ・リベルトゥス）。

判明している血牙族一覧

最高位の血牙族は、眷属を介さず、唯一竜の御許から直接産生まれた「スマラグドの民」。すなわち「金眸の民」ないし「呪われし民」である。二番目に黒白、次いで青・銀・金・紫・茶・赤牙族と続く。
本編軸では何世代にも渡って人と交わり、血は薄れているが、今でも時折「竜返り」として血牙族の異能を強く受け継いだ者が誕生するという。
しかし今や「血牙族」という単語そのものが忘れ去られ、過去の遺物と成り果てた。

魔力と貸与

• 授けし力　 力の代償　 精神負荷　 奏者　 破門　 ▲

不思議な力を持つ者

眷属は己の魔力を他へ貸し与えることができる。
元々これは、眷属が血牙族へ協力するために編み出したものだったが、人間へ貸すことも可能である。竜大陸においてこの力を授かった者は角の力を奏でるという意味で「奏者」と呼ばれる。

魔力の効力は「与える側の強さ×受ける側の適性」によって変化していく。
血統が〔血牙族〕に近いほど適性が高くなる一方、通常の人間では契約自体失敗することも。本編軸では魔力を貸与出来る個体は三体のみ――連邦北方の〔黒角〕、公国神獣の赤角、帝国顧問の〔青角〕だけが行使可能である。

力の代償

人間が眷属から能力を授かった場合、過ぎた力ゆえに、等しく短命となる。
貸与によって得られる力が絶大すぎて身体に負担が掛かるのだ。そのため、奏者は早世しやすい。
まず最初の副作用、「無痛」が訪れる。これは眷属側が意図的に施す作用だ。恩寵とは本来、亜人たる血牙族が得るべき力。脆き人には強すぎるため、力の反動で奏者は強烈な痛みに襲われる。あまりの苦痛に彼らは力を行使するまえに精神が蝕まれ、廃人に至ってしまう。

次なる副作用は、直接的に死の危険を孕む。眷属の持つ性質が極限まで高められた結果、眷属が司る力に類した様々な症状を引き起こすものだ。
例えば、
青角から力を受けると水を操る力を得る。代わりに体温が下がり、時が経つほどに、低体温症に似た症状を発症。最期は冬眠するように凍死する。
赤角から力を受けると炎を操る力を得る。と同時に熱さを一切感じなくなり、心臓が焼け焦げていることに気がつかぬまま過ごす。最期は内側から焼死する。

精神的影響

最後の副作用は奏者の精神へ作用する。
本来、奏者とは血牙族がなるべきものである。しかし大陸ではヒトを対象としているため、負荷が大きく、血牙族では見られなかった新たなる副作用が確認されている。それは奏者の核となる性格、ないし本質部分が剥き出しになっていくというもの。
粗雑な者ならばより横暴に、怠惰な者ならばより無為に、欲深きものならばただただ貪欲に――本質をえぐり出され続けた者はいずれ奏者として期待された働きを出来なくなる。結果として彼らは「何らかの方法」で代替わりしていかねばならない。

奏者について

大陸では、魔力貸与された人間を「奏者」と呼び習わす。
楽の音を通して力を行使すること、特に初代異能者が角笛を吹き鳴らして力を行使したことから、「力を奏でる者」という意味の呼称が定着した。
青角奏者は水ピアノを使用して水を繰る。これは青角の氷で出来た鍵盤である。
赤角奏者はハープを使用して炎を纏う。これは赤角の羽根から作った弦である。

黒と白の眷属

黒翼・白翼の眷属はさらに強い力を持つ。なぜなら、眷属が各羽翼獣の分身であるのに対し、黒や白は本人が転生した姿である。よって彼らから力を得た場合は多少事情が変わってくる。
例えば、黒翼は生命を司る存在である。眷属も「生命強化」の異能を持つ。彼らから魔力を得ると、生命力が飛躍的に増幅し、短命というリスクが消滅する。つまり死にかけている者なら息を吹き返し健常者なら何世紀も生き続けることさえ可能になるのだ。
しかし――強化されたからといっても不死身ではない。貸与後に耐久度を超えて致命傷を受けると身体を保てず死に至る。

各国の奏者

ガルタフト連邦に住む黒角イーノクは大監獄の囚人たちへ力を与える。黒角は力が強いため、同時に幾人へも貸与することが可能なのだ。

ミアナハ公国に住む赤角ハームは、国家元首〔ミアナハ大公〕ただ一人に力を貸し与える。公国では「赤角の力を受けた者＝神々の恩寵を受けた特別な人間」と扱われ、その者こそ国を治めるに相応しいと考えられている。

オルドーグ帝国の青角ヨエツが誰かへ力を分け与えたという情報はない。代わりに、力を受け継いだ子が居るという裏の噂はある。

破門について

力の貸与は通常一度行うとキャンセル不可能である。
どちらかが死ぬまで、または、より適性の高い相手へ更新されるまで関係は続く。しかし稀に破門という出来事が起きる。これは生きたまま恩寵から外れる状態を指す。少数にしか恩寵を与えられない眷属に、現在よりも適性の高い者が現われて魔力貸与の対象が変わってしまった場合に起きると予想される。

これまでの前例

最たる例は本編の父・オルランド前大公と、その息子・リナルド現大公。元々は前大公が契約していたが諸事情が重なり前大公が生きているうちにリナルド現大公と再契約した。よってオルランド前大公の契約は切れて所謂「破門」状態になったと考えられる。
前大公が行方不明であるため、破門となった者がその後どうなるかは明らかにされていない。

金のまなこ

• 金目とは　 呪われし民　 異邦人　 差別　 歴代金眼　 八代目　 ▲

二つの金目

竜大陸では金色の瞳をもった生物のことを総称して「金目」と呼ぶ。
しかし人々が「金目」と呼ぶ時二つの意味が含まれる。
呪われし金眸の民「ゴールンデンアイズ」、金眼の異邦人「エンシェントアイズ」――どちらの金目も異形と見なされる。

呪われし金眸の民

ひとつ、唯一竜の懐から生まれ出た血牙族「スマラグドの民」ないし「呪われし金眸の民」、ひいてはその末裔のこと。
彼らは恵みを大地へ注ぐ役目を担っていたと言われる。だが身体的な力は他血族に負けていた。そのため大陸では元々の住処であった〈竜の頭〉を追われて数を減らし、呪われし民と呼ばれるようになった。以降これらを「金眸の民(きんぼうのたみ)」もしくは「GE」と呼称する。

金眼の異邦人

ふたつ、世紀の節目に現れる異能者、その瞳で様々なモノを視抜く者たちのこと。
ある者は過去を、ある者は未来を、ある者は死者を、ある者は人の色を、ある者は隠された知識を、ある者は魂を、ある者は人の心を、ある者は時代の意志を、ある者は殺される予定の者を――。
そうして時代時代に人々を導いた不思議な存在である。身元不明の者が多いことから異邦人と称されることが多い。
仔細な記録が残る〔ケアド共和国〕では彼らを「金眼の異邦人」と呼び崇拝対象としている。以降これらを「金眼(きんがん)」もしくは「AE」と呼称する。

金目差別

伝承によれば、歴代の金眼――すなわち「異邦人」たちは特殊な力を持つ。彼らはかつて世界を滅ぼした呪われし竜の使者と伝えられ、存在そのものが禁忌である。
よって時の為政者たちは金の目を持つ者はすべからく金眼たる可能性を含むと考え金目差別を強めていった。
しかし金の瞳を持つからといって、ただの民であるか、特別な金眼であるか、一見してはそうと分からない。一説では「金眼の異邦人」の瞳には神秘的な紫色の影が掛かると言われているが真偽は定かではない。

どちらにも属さない者、所謂、通常の人間は、金目からの蔑称として視えざる者と呼ばれることがある。

かつての金眼

金眼の異邦人は必ずしも種族が人間とは限らなかった。
記録に残っているだけで猫・虫・蜥蜴・馬など様々な種が金眼と認定されている。
彼らは前任者から託された使命を代々担っていくが、金眼がそれを成し終わる前に死亡した場合、同じ力を持った金眼が近いうちに産まれるらしいとの調査結果がある。つまり使命を為し終えた者が数人だったというだけで本当はもっと多くの金眼が存在していたのかもしれない。

史実から見る歴代金眼

共和国に保管される歴史書によれば金眼の異邦人は九人確認されている。
名前は数字の意味を含み活動した時代の順番に名付けられる。本名は別にあるらしいが、判明している者は少ない。よってたいていは数字呼び。