かつては竜が治めていた世界全域を「アハシュカル(神託の地)」と呼んでいた 。 しかし竜が天翔ることを止め、天上に魂を残したまま海へ堕ちた ――そう考えられて久しく、人々は「竜の身体がある場所」と「魂が残る場所」とに世界を二分して認識するようになった。
それにともない本編時間軸では、竜が堕ちたこの世界を人の縄張りである「地上」 、元々竜が住まわりその魂が残る天空の楽園世界を「神託の地アハシュカル」 と呼ぶ。
実際のところ「神託の地アハシュカル」は現実に存在する土地 であり、天上の楽園などではない。 しかし大陸の人々は真実を知らない。 そのため彼らは極楽の地として見果てぬ天に情景を抱く。
スマラグド大陸でたびたび起こる竜頭争奪戦争。 元をたどれば竜と七匹の羽翼獣を中心とした宗教的対立に行き着く。 この争いは学術界では「角牙争乱」と呼ばれている。
竜大陸には亜竜たる翼獣を「七角」と呼ぶ文化がある。 中でも連邦国は、黒翼メルギラを善なる主神に据え、敵対する白翼フルティラを悪神として二項対立を軸とした教義を形成した。 二神とそれに連なる五翼を崇める考えは「七角信仰」と呼ばれ、大陸各地の宗教的土台となった。 ここから派生したものとして、公国の「赤角信仰」、帝国の「青角信仰」、共和国の「大陸竜信仰」などが挙げられる。
二神+五翼で「七角信仰」。 竜を入れると八角となる。 竜は崇めるべき対象とされていないため、基本は七角である。 連邦国においては中立地以外の全員が牙派に所属する。
竜大陸には七竜信仰に基づく派閥が存在する。 「角派か牙派か」は「竜を悪とするか」「金目を悪とするか」といった思想へ深く関わってくる。
公 国 | 角派 竜と金目は絶対的な悪 |
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帝 国 | 北部は角派 南部の自治体は牙派 金目を利用するが悪に変わりない |
連邦国 |
牙派 竜は力の象徴として良き者 金目は神話崩壊を招いた悪しき者 |
共和国 | 金目を崇めるため、基本は無派閥 極西部の一部に僅かな牙派 |
大 橋 | 無派閥 信教の自由はあるが非常に冷淡 |
竜 頭 | 帝都に準じ角派が多い 生粋の角派より竜に対する考えは穏健 金目国の遺構があり複雑な情勢 |
善 :二神、五翼、角笛伝承 中立:なし 悪 :竜、金目、竜返り 公国全域、帝国帝都を中心とする西翼北部、それに準ずる竜頭地域に多い。 彼らは「かつて七角なる羽翼獣たちが、美しい魔法の角笛で悪しき竜を眠らせ、世界に繁栄をもたらした」と言う伝承を信じている。 七つの角達は大陸の人々を救った救世主とされ、角持つ幻獣を崇める者として「角派」と名乗った。 亜竜の頭目である黒翼メルギラが最高指導者と解釈される。 竜大陸の大多数が角派である。
角派の特徴は「竜に連なるものは全て悪」と見なすこと。 大陸における竜は元より創造と破滅の象徴であったが、こと角派において竜は破滅の象徴となり、「竜に連なる金目の一族および牙族」もまた破壊をもたらす悪となる。 同様に竜返りも畏るるべき忌まわしきものである。
黒翼メルギラは樹木の姿を取ることから、大樹派と呼ぶ勢力もある。 この考えは帝都に多く、大陸全土では主流になりつつある。 いわゆる穏健派。
黒翼メルギラは大地神であるため、彼女を主神に据える連邦国には今なお「角派=大地神派」と呼ぶ者が多い。 この派閥を名乗る者は過激な思想を持つ傾向にあり、他国では警戒対象となっている。 とはいえ、黒翼メルギラを最高神とするため、白翼フルティラを崇める連邦国反王党派にはあまり浸透していないこと、連邦国王党派においても「竜返り」は神聖なものであることから、大地神派に属する者はごくごく少数派である。
善 :二神、五翼 中立:竜、竜返り 悪 :金目 連邦国全域、帝国商都を中心とする西翼南部に多い。 角派と同じく七角を崇めている部分は同じ。 しかし亜竜たる翼獣に力を与えられ、人より優れた力を持つ亜人「牙族」――その力を受け継いだ「選ばれし存在」だと信じるひとびとが、角派と区別するため、自らを「牙派」と呼称したのが始まりである。
角派と異なり、金目や竜に関しては寛容な解釈をする。 彼らは、「竜が息絶えたいま、五翼と同格だった血牙族が世界を繁栄へと導くべし」と信じている。よって竜の牙族であった金目のことも「亜人の力を受け継ぐ同胞のひとり」として見なす。 また、牙族における竜返りは「亜竜たる五翼へ近づいた印」として吉兆の象徴。 こと連邦国ではゾイ王家にのみ見られる現象であり、平民であっても王位継承権を得るほどだ。 それでもなお、金目は悪とされる理由は、牙族が滅んだ原因にある。 牙派のひとびとは「牙族衰退の原因こそが金目だ」と認識しており、「牙族滅亡の要因を作った存在が、ニアラスという名の金目だった」という独自の伝承を持っている。
六つの牙、すなわち金目を除く亜人・血牙族を指す。 牙派といえば六牙派(りくがは)である。
反王党派の人間は知識を司る白翼フティラを崇める。彼らは、フルティラこそ六翼の主人に相応しいと考える。 牙派自体が少数派だが、中でも魔力に魅入られる者が傾倒する。 牙派内の過激派といったところか。
一年間の季節は四つ。 気候に即してはいるが、基本概念は四つの門が司る季節として分類される。 この四門とは、木洩れ日時代に作られた魔法の門――聖門、翠門、法門、魔門を指す。
一年間は8つの月で構成されている。 亜竜の数にちなんでいる。 ただし9年間に一度だけ「9つ目の月」が登場。 悪しき竜が微睡から目覚めるこの時期は、諍いご法度であり、悪しき竜を鎮めるための神事が終日行われていく。
聖門マグノリアが司る季節。厳しい寒さが明けたことを喜び心身を癒す。柔らかな息吹が草原を渡る季節。 翼獣たちの長兄が祀られるため、最も尊い「翼」の季節とされる。
治定の月 | 黒翼メルギラを奉じる萌黄の季節 |
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機構の月 | 白翼フルティラを奉じる思索の季節 |
翠門カレンデュラが司る季節。たまゆらの命が活き活きと野を駆けて力を増す。青々とした熱波が海原を渡る季節。 次位の翼獣たちが祀られるため、二番目に尊い「角」の季節とされる。
融和の月 | 青腹ニエマイアを奉じる深緑の季節 |
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調律の月 | 茶首エリジェヴを奉じる農耕の季節 |
法門オマンサスが司る季節。恍惚とした情熱が過ぎ去ると魂は熟成される。麗しき金の撚糸が高原を渡る季節。 中立を維持する翼獣たちが祀られるため、三番目に尊い「牙」の季節とされる。
裁定の月 | 銀背リーリートを奉じる朋友の季節 |
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諮問の月 | 金背ラザラスを奉じる学究の季節 |
魔門サイネリアが司る季節。省察経ても定まらぬ心は踏みにじられるだけ。身を焦がす祈りが氷原を渡る季節。 地位の低い翼獣たちが祀られるため、人にいと近き「爪」の季節とされる。
執行の月 | 紫爪ゼカルヤを奉じる残照の季節 |
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隷属の月 | 赤尾オーヴェドを奉じる朽葉の季節 |
竜門スマラグドが司る季節。悪しき竜の残滓が強まり災いをもたらす。苦悶の叫びが大陸に響き渡る季節。 三体の亜竜が空を舞い、一か月間ひもすがら神事を行う。 9年に一度だけ訪れ、大陸中を恐怖に包む、忌まわしき「楔」の月とされる。 実際はお祭り騒ぎで賑わうが、いずこともなく聞こえる「嘆きの声」から意識を逸らすためだと言われる。
戒門の月 | 大陸竜スマラグドを封じる瞑目の季節 |
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