名 | 場所・特徴 | 都市 |
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狂気 | 左翼-渓谷・凍土 | 王都ルーナ=プラナ 副都ルーナ=ノア |
国教・政治 | 統治者 | 民族 |
絶対王政 九竜信仰 |
女王アリアドネ ゾイ王家 |
ケアド人 -スアス派 -トレアン派 -無信教派 |
正式名称は「ガルタフトおよび五竜伯からなる連邦」。 ソ・ラスナ山脈以東、一年を通して雪に覆われた〈東翼〉に位置する厳冬の大国 。国全体が〔牙派〕である。 北部は極寒の大監獄、かろうじて人が暮らせる南域は寒帯。 その中でひときわ美しい瑠璃花「ルアハの花」 が強く咲き誇り〔黒翼〕 が植えた聖花として神聖視 されている。 国家元首はアリアドネ・ゾイ女王、元は反王党派の筆頭だった人物。だが現在はなぜか王位に就き国王集権の絶対王政 を敷いている。 国民の血統は共和国と同じケアド人。 すべて押し流す水のような、あらゆる刻の止まった氷のような国。
王都が位置する渓谷には宗教観青き花々 が咲き乱れる。これらは「ルアハの花」または「褒美花」と愛され、厳寒に包まれた凍原を凜と飾る。 国花・ルアハの花には逸話がある。 昔々連邦国が小さな国だった頃、国王に美しい娘がいたと言う。娘は渓谷を彩る花々を慈しみ、彼女もまた瑠璃花と親しまれ愛された。 そんな時だ。ある男が功績を立て王に褒美問われた。すると男は王の娘を指差し「あなたの青いお花(娘さん)をください」と告げた。 かくしてこの花は褒美を意味する「ルアハ」 という名で呼ばれるようになった。
大陸には竜の災厄から大陸を救った、角を持つ七匹の翼獣を「七角」と呼ぶ文化がある 。 神事も司る連邦国王家は大地神・黒翼メルギラを善なる主神に据え、対となる天空神・白翼フルティラを悪神として、二項対立を軸とした教義を形成した。二神角とそれに連なる五匹の翼角を崇めるこの信仰は「七角信仰」と呼ばれ 、大陸各地へ広がり、世界の宗教的土台となった。 類するものは公国の赤角信仰、帝国の青角信仰、共和国の大陸竜信仰などが挙げられる。 なお、この信仰を発端に、本編世界情勢を形作る〔角牙争乱〕が生まれた。
極寒地・北森は黒角イーノクの独立支配地帯。 監獄地帯には特異な障壁が張り巡らされ女王の権力も届かない 。内部は基本的に自由であるものの、囚人は住居区画が分けられ、物々交換が基本である。
連邦内の特徴は国内で大きく分裂した宗教派閥。・黒翼メルギラを崇める王党派 ・白翼フルティラを崇める反王党派 ・どちらにも属さぬ中立派 主に上記二派閥が終わりの見えぬ政権争いに昼夜明け暮れる。派閥の決定とは 生まれた土地によって強制的に定まる。自ら望んで変えることは困難。生業とは 派閥ごとに役割分担がある。政治や神事を〔黒翼・王党派〕、軍事や汚れ仕事を白翼・反王党派、と国法で決まっている。中立派閥とは 黒翼、白翼以外の神を信じる、もしくは神を信じない人達のこと。一定の手続きを取ればこの派閥へ離脱可。だがそうなった場合、市民権がない・自由に国外へ移動出来ない・国内に留まる場合は生涯農業に関わって暮らす、など思想以外の権利に制限が掛かる。 また、一度でも中立派閥へ移動すると両派閥へは戻れない。
連邦は九都市 に分かれ、それぞれ黒翼・白翼を祀る。 王都を黒翼・王党派、副都を白翼・反王党派が治め、その他五区域を治める中心的役人を「獣伯」と呼ぶ。彼らは総称して「五獣伯」 と呼ばれる。双獣伯の金銀領のみ中立地 とされ、いかなる派閥争いも許されない。 獣伯制度と七角信仰には、教皇の定めた七戒律 が存在する。 1.民は居住区を司る二神角および翼角を敬い信仰しなければならない。 2.自らの七角が司る物以外を生業にしてはいけない。 3.自らの七角を侮辱された場合は他国民相手であっても決闘が許される。 4.選王権を持つのは青、金、銀の市民のみに限られる。 5.国王になる資格は主神たる黒翼出身者のみに与えられる。 6.金銀領土を持つ双獣伯は政に直接関与してはならず、また同領地の学都及び遊都で派閥争いをしてはならない。 7.七角信仰を放棄した場合は本国におけるいかなる権利をも放棄したとみなされる。 神事は黒翼を主神とする王党派が担っているので、王党派に有利な戒律となっている点にも注目したい。 たとえば黒翼眷属である青獣伯領で生まれた市民は、青腹と黒翼を信仰し、政治や神事に深く関わる人生を送る。 獣伯の階級は七竜の位階に準じ、上から青獣伯、双獣伯、茶獣伯、紫獣伯、赤獣伯と続く。 また、選王権とは国王を選出する権利 を指し、投票によって選ばれた王党派出身の人間が国王となる。
支配域 | 特徴 長 階級 |
派閥 信仰 |
都市 専門業 |
選王権 |
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王都 |
渓谷 国王 王家 |
王党派 黒翼 |
王都ルーナ=プラナ 神官業・政治・婚礼 |
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副都 |
竜骨 軍総裁 貴族 |
反王党派 白翼 |
副都ルーナ=ノア 軍事・葬儀・暗殺業 |
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青獣伯領 |
海岸 青獣伯 公爵 |
王党派 黒・青腹 |
海都 海軍・軽&海洋業 |
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双獣伯領 |
内陸 双獣伯 侯爵 |
反王党派 白・銀背 |
遊都リリト=リラ 商業都市・高級娯楽 |
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双獣伯領 |
地下 双獣伯 侯爵 |
絶対中立地 黒・金背 |
学都クノク=アイル 学術都市・魔法養成・農業 |
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茶獣伯領 |
森林 茶獣伯 伯爵 |
王党派&中立 黒・茶首 |
豊都 農業全般・山林業 |
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紫獣伯領 |
天空 紫獣伯 子爵 |
反王党派 白・紫爪 |
空都カタラクタ 空軍・武器生産・軍事研究 |
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赤獣伯領 |
火山 赤獣伯 男爵 |
反王党派 白・赤尾 |
軍都 陸軍・重工業・金鉱業 |
文明の発展は往往にして生死と直接的な関わりを持つ。 殊に寒冷地へ追いやられた、白翼を主神とする反王党派にとって魔法技術の向上は死活問題 であった。 一方黒翼を主神として長らくこの地を治めてきた王党派は比較的暖かく恵まれた地に住み 農耕や漁へ従事して食糧に困ることも少なかった。
「東方」は青獣伯領があり貿易や海軍が盛ん となっている。北東の港は一年中凍っており民間人はほとんど住まない。主に海軍が住まい、寒冷地でしか出来ない研究が進められている。 「南東」は青獣伯領の一部だが、海岸沿いには漁村 が並び、貴重な不凍港 として食糧供給を担う。
「西方」は赤獣伯領、紫獣伯領が存在。大陸最大のソ・ラスナ山脈が連なり西方諸国と当連邦を分断。諸外国と接するため軍関係者が多く駐在し陸軍、空軍、魔法軍の本拠地 も置かれる。雪山系の山脈沿いは寒さが厳しく不毛の地であるため反王党派居住区 とされる。
「中央」は王都、双獣伯領が存在。王都は何かから守られるように周囲を獣伯領に囲まれ渓流で育まれたルアハの花が咲き乱れる。また、王都の上に位置する双獣伯領土は保温・防護を兼ねる魔法壁 を張り、北から流れ込む冷風を防ぐ大事な役割がある。そのお陰で王都は快適な生活が保証 されている。
「北方」は監獄地 。一度この地へ入れば国王や獣伯は干渉出来ず、黒角イーノクの支配下となる。大陸一寒さが厳しい地域であり年中雪に覆われているため、黒角の保護なしでは生命は存在できず、かつては罪人や赤児の捨て山 とされていた。現在も自らこの地へ住もうとする民間人は存在しない。
「南方」は茶獣伯領が存在。比較的暖かく国内唯一の農耕地帯 として重要な土地とされる。引退後の別荘地としても人気が高いが、土地には限りがあるため必然的に王党派や市民が優先 される。
中心都市は「ルーナ=プラナ」。 王党派拠点。別名「月満つ都」。 何千年も掛けて雪解け水に抉りられて成立した渓谷に存在し、青空を映したようなルアハの花 が咲き乱れる様は圧巻。 澄んだ渓流を一身に浴びるよう崖沿いへ建立された城周辺は〔七竜信仰〕 の中心地。神殿が建ち並び、渓谷全体を覆う魔法壁 が保温の役目を果たす。 美しい光景に反して、反王党派に対する根強い差別文化 があり、仮に王家に名を連ねた者であっても反王党派出身者というだけで下位の者から虐げられている。 王政を肯定する地であるため、王都に永住出来るのは王族、ないし彼らに忠誠の証を立てた者 に限定される。他の〔王党派系〕貴族や神官など王家従事者はモナルク山麓に築かれた貴族街 に宿を構え、主君の暮らしを日々守っている。 また、ここは祭事を司る聖地でもあり、王都そのものはあくまで「祈りの地」 という認識にある。よって、街とは本来活気溢れていることが望ましいとされるが、王都ルーナ・プラナは静閑としてステンドグラスの煌めきが厳かに銀雪を照らすのみである。 都の中心には黒翼を象った女神像が配置されるが、女王アリアドネが都を攻め落とした際、破壊魔法の余波で像が崩れ現在に至っても修復の目処は立っていないと言う。 なお王都周辺を囲むのは王の山・モナルク山 。四方を岩壁で囲まれた逃げ道のない不利な地形であるも、地下に広がる巨大な迷路空間 がこれまで都民の安全を守ってきた。 ちなみに七竜信仰の彫像が建ち並ぶこの「王都」とは、広義ではルーナ=プラナという地のみに留まらず「王都=ルアハの花が咲く地域全体」 を指す。よってモナルク山と渓谷全体を含めて王都と呼ぶこともある。
中心都市は「ルーナ=ノア」。 別名「月なき都」。反王党派拠点 は軍事総監が駐在する要塞軍事都市 である。 地理的に竜頭争奪区と国境線が近くいつ何時隣国が攻め込んできても対処出来るよう、陸軍空軍に加え金竜伯領で育成されたエリート魔法軍が防備を固めている。 戦時下になると総監は赤紫金の各軍の全体指揮をこの地で執り 、侵略者から王党派領土を無傷に保つ。副都とはつまるところ「どの時代においても被害を負うのは反王党派」という理不尽さ に耐え抜いてきた忍耐深き地なのだろう。 かつて首都=政治の中心は支配者により副都と王都を行ったり来たりしていた。反王党派支配者の時は副都が首都に、スアス系民族支配者の時は王都が首都に、という塩梅である。 しかし地理・宗教・政治・魔力どれをとっても王都ルーナ=プラナが重要な地 であることは変わらない。であるならば首都を副都にするより王都そのものを乗っ取ったほうが影響力は大きいはずだ――そう考えた反王党派は出身の現女王アリアドネは王都を陥落させ、自分の居城とした。 これにより副都は軍事へ専念するようになり、戦いは副都、政治は王都 とシンプルな統治図が構築された。
青獣伯領は海沿いに細長く位置し、貿易、船舶業、海軍業 などを担う。 凪のように穏やかな人が多いが、海軍拠点の一つ でもあるため青領兵は高い戦闘能力を誇り、海岸線に決して破られたことのない鉄壁の守りを展開している。 この地一つで、軍事を生業とする反王党派に匹敵する戦力を保有 しているとも言われ、内乱時だけでなく今現在も王党派の主戦力 として活躍する。 凍土近き北方は毎日氷河に襲われ年々土地が削れていく。しかし氷点下の世界 でしか行えない様々な研究が進められ、学問の徒が多く集う金竜伯領との軍事的連携が深まっている。 南方は〔公国側〕を流れる暖流によって比較的暖かく暮らしやすい。そのため漁業に勤しむ漁村が点在。また湾内側には王都公認の海賊拠点 が存在するとされ、公国貴金属運搬船を襲撃しては資源の乏しい連邦国へ物資をもたらしている。
なお七竜信仰において青竜は黒白に次いで地位が高い。よって青獣伯領で産まれた人々は国内で強い発言力 を持ち女王戴冠前は選王権を持っていた 。
双獣伯領は王都北方に位置し中立な学び屋 として〔魔法〕や政治を動かす人材育成 に努める。治めるは銀竜伯領と同じ双竜伯。 学都クノク=アイルは古めかしいデザインの図書館群や大学、研究所が立ち並び、どこか時代錯誤な印象すら受ける。 学都と遊都――双獣伯の治める地は中立地 とされ、この地でカリキュラムを終えた者は各専門家となり学都に残るか、魔法軍へ入り戦いに身を置くか、魔牙機(独自魔法・ガルを原動力にした機械:電気の代わりを果たす)の貴重な操縦者となるか、優秀な魔法の使い手として王党派に迎え入れられるか、いずれにしても派閥に関係なく約束された未来 が待っている。 彼らは領内に残れば選王権 を得られるが、残るならば極寒の北風から王都を守る役目を負う 。王都が滅びるまで魔法障壁を王都全域へ供給し続けなければならないのだ。 また派閥を越えたこの地では信仰に関する諍いは御法度 だ。しかし学術的な見地からならば七竜信仰について熱い議論を交わすことが出来る。 むろん言論の自由を国内で保障 されたこの規則は反政府的思考を助長する可能性もあるだろう。だが生徒はほぼ各領上流階級出身であり体制を根本から覆したいと願う者は極使用数に留まる。しかしそれでもなお中立であることを拒む領民は同派閥の空都や軍都へ流れゆくという。 学都では研究だけに飽き足らず実生活に即した技術 も学べる。たとえば魔法の他に各都市の生活を支える魔動機操縦資格を習得 出来る。使用者は許可証代わりの紋を牙章表面へ刻む必要があるが、刻印出来る施設は学都にしか存在しない。これは政府が魔法の使用を監視し力の乱用を防ぐ目的 がある。
双獣伯領は格式高い店が立ち並ぶ高級街 である一方、花街 を有する遊都として煌びやかな夜の街を演出する。治めるは学都と同じ双竜伯。 海都と距離が近く貿易関係の人間をもてなすことで発展したが、異国情緒に溢れる様子 は遊都リリト=リラが学都同様に特別な地であることを示す。 学都と遊都――双獣伯の治める地は中立地 とされ、殊にこの遊都では幾つかの戒律が適用外 とされる。よって同じ連邦国でありながら「別国」に分類する者もいる。 理由は二つ。一つ目は、他宗教の者と額を付き合わせ商談するので多様な文化に適応 する必要があるということ。七竜信仰を信奉していない異国民にとってここは海都より住みやすく、かつ王都に近いため、領事館 が最も多く置かれている。 二つ目は、花街があるためお忍びで来る者が少なくないこと。身分を明かすことを良しとせぬ上流階級者への配慮 はいつしか例外を作り、慣例となった。 以上の理由から遊都は戒律に寛容な地 となった。
とはいえここは北森に近く主産業はないに等しい地 。貿易が激減する戦時中は自給自足を阻まれるが、銀竜伯領の守護竜「絲紡ぎの女リーリート」へ慕情する信者らにより毎年多くの貢ぎ物が届くという。
茶獣伯領は南方の巨大農耕地帯 を所持し、食糧自給の中心 という重要な役目を果たしている。住人のほとんどは農耕をしながらのどかな自然に生きており生活満足度は国内随一。 引退した王族の別荘が立ち並ぶ一方、市民権を捨て宗教の自由を選んだ無信教派が唯一滞在を許される地 でもある。が、美しい自然がそうさせるのか派閥による目立った諍いは少ない。ゆえに「微睡みの地」 という別名を持つ。 この地が農耕で花開いた理由の一つに、渓谷から流れ出る栄養豊かな渓流 がある。上流は冷たい雪どけ水が、下流は木々を巡り様々な栄養素を混ぜ合わせた命の水が植物を育んでいく。 しかし、極寒より解放された者達は自然の恵みに感謝すれど、ここが王党派領であることを忘れてはいけない。最高級の食べ物は王都へ、高品質は王党派領へ、その他は反王党派領へ、と一見穏やかな地でも確かな格差が見受けられる 。
なお西側は大陸最大の雪渓と近いが冬風は領境にあるファル・グリン山で遮られ冷害被害を免れている。
紫獣伯領は大陸唯一の空軍基地 を誇る空都カタラクタとして軍事力の一端を担う。ここでは山脈西の麓で採れる資源を利用して大規模な武器開発 を行い、隣接した学都や軍都と手を組み強力な兵器の研究している。 実験に関する規則が緩い ため学都出身者がこの地に腰を下ろして研究・開発へ携わる例は多い。秘密主義で同領土へ足を踏み入れると二度と出て来ることが出来ない とまことしやかな噂が流れるも、副産物として生活を豊かにする魔牙機を発明 し文明開化を引き起こした輝かしい実績もある。 往往にして彼らの開発行為は連邦国所有ソ・ラスナ山脈を守護 するという重要な任務の上に成り立つ。公国と連邦国を分断する形で横たわるこの雪渓は奇襲に優れた〔公国騎兵軍〕により何度も攻略され国民の生活を脅かされてきたからだ。軍都同様、戦時下は前線として山脈の内外を守る連邦国の番人 となる。 なお設備の関係上、魔法ガルの媒体「牙玉」を加工する錬金術師 がこの地へ集中している。加えて材料に拘る職人は山奥に工房 を設けるため、より良い媒体を求め、危険を冒してでも雪渓へ入る者が後を絶たない。
赤獣伯領は大部分が各軍の駐屯地 である。領内には副都を有し緊急時は軍事総監から直接命令が下るという。 また、竜頭争奪区の国境線に直接面し領土全体が基地化 。恒常的に危険に晒されているせいか盲目な信仰過激派が多い。 王党派・異国両者に対して排他主義 、王家並び王党派に対しては憎しみすら感じさせる。通常、一般の国民は七竜信仰に従い生きるもあくまで生活のルールとして判断しどこか冷静であるが、ここの領民は神話を盲信 しているようにさえ見える。彼らが忠誠を誓うのはあくまで副都であり王家は敵 なのだ。 同様に隣国公国とは宗教上の理由で激しく対立し 理由なく小競り合いを始めてしまう。戦時下は優秀な防波堤として機能するが、平和な時期であればあるほど手を焼く地域だろう。 地理的に資源豊かな竜頭に近く繊維や製紙業 などが発展しつつある。しかし以前は卓越した錬鉄技術 を誇っていた。その技術は現在まで衰えることなく伝承され、国内各都へ完成度の高い金属製品を輸出している。
かきかけだよ
ガルタフト連邦国の秀でた文明基盤、魔法に類する技術 。 錬金術に似たこの独自技術を国の頭文字を取って「ガル」と呼ぶ。 鉄から金を創り出す等、別の物質を創り出すことが可能 だ。 この技術は元からある物体を作り替えるだけである。無から有を産み出すことは出来ない 。 極寒の地で彼らは火を灯し、熱を生み出し、見捨てられた地で生き延び続けた。 しかし強すぎる力は呪いの如し。魔法が一般的でないスマラグド大陸においてこれらは恐怖の対象である。とはいえ過酷な環境で命を繋ぐために先人達が苦肉の策で編み出した生きる知恵だった、ということを忘れてはならない。
魔術の始まりは〔ゾイ王家〕であった。王家の人間は他所の土地へ行っても支障なくこの力を使用出来る 。 彼らは魔法において絶対的な力を誇る立場だったのだ。 侵略戦争中は敵軍撃退に大いに役立ったと記録が残されている。 その絶大な力を恐れた諸外国はガルを「呪い」と呼び、ガルの使用者、つまり魔術師を「牙使い」 と畏れた。 なおこの力は〔竜〕に与する〔血族〕由来の力だと考えられ、彼らの別名・牙族にちなみ名付けられた。
略して「牙機」。魔法で動くものは多くあれど殊に魔法ガルを原動力として動く「機械」「装置」 を指す科学の延長技術。 機械の基本構造は帝国で発明されたものと同じだが、連邦国の技術に合わせて改良を重ねられた結果、武器から生活用品まで多岐に渡り存在している。魔牙機は国民の生活を支える重要なもの であり、たとえば灯り、たとえば交通、たとえば防災と生活に溶け込み国民の生活を支えている。 しかし強力な力は毒にもなり得、使用者を蝕んでいく。そのため魔牙機は「牙使い」の中でも、政府公認許可証である特定の「紋」を持つ者だけが操作可能 と法律で定められている。 装置の稼働には牙玉および牙章を用いることから、魔法の牙の機械「魔牙機」と名付けられた。転じて「禍き-マガキ-」「マガイモノ」と揶揄されることもある。
魔法ガルは非常に有用な技術だが、大きな難点が四つある。・一つ、「牙玉」およびそれを加工した「牙章」なしに発動しないこと。 ・二つ、使用者の生命エネルギーを利用するため過度な使用は死を招くこと。 ・三つ、その力を国外へ持ち出せないこと。 ・四つ、使用者は高度な科学知識を備えていなければならないこと。 一般市民の単独使用は禁じられ、連邦国では三人一組制度 が徹底されている。 また王族以外の使用者がひとたび連邦国領地外へ出ると魔法が使えなくなる。
「牙玉」とは魔力を増幅させる特殊媒体 である。使い手はこれを好みの錬金術師に加工してもらう。
加工が終わった牙玉は「牙章」と呼ばれ魔法使用許可証として公的効力を持つ ようになる。 なお牙玉は扱い上は単なる増幅装置であるため、元々魔法適性のない者は牙玉を得たところで魔法を行使することは出来ない。
力の強い者は稀に牙玉なしでガルを使用できる。そんな人物は数世紀に一人産まれるかどうかだが、本編では第三王子ミハリスが該当。 なお魔法の源「牙玉」の製作はゾイ王家のみに許された行為 であり、技術も秘匿される。 これは国内で王党派・反王党派の身分格差を生み出す要因にもなっている。
牙章があれば国内様々に配置された「魔牙機」を扱うことが出来る。 だが、完成したばかりの牙章にはまだ使用資格がない。ガル使いは牙章が出来上がると、今度は学都カタラクタを訪れて資格証明となる「紋」 を表面に刻む。 つまり紋の数が多いほど社会的に認められた人物 ということになる。
建築に秀でた者、農業に秀でた者、武器生成に秀でた者など、牙使いは各方面での向き不向き がある。その中で強い力を持つ使い手は殊にある方面へ特化した才能 が現われることがある。 これを連邦国では「異能持ち」を呼ぶ。中でも抜群の知名度を誇るのが「アルケミー」だが、この異能者は前線で戦う確率が高く目に付き易いことが知名度に貢献しているのだろう。
名称 | 特性 |
---|---|
Alchemy アルケミー |
あらゆる物質を破壊・創造することが出来る |
Infection インフェクション |
己の感情や思考を染み渡らせ他者の思考を侵食する |
Moment モーメント |
閃きや直感力、記憶力に優れておりAEに似た第六感を持つ |
Transient トランシェント |
誰にでも好かれ心の間合いへ滑り込むことに卓越する |
Canceling アイソレーター |
相手のガルで引き起こされた出来事を遮断する |
Sensor センサー |
ガルの痕跡や発動を感知する |
スアス派は月である。トレアン派は星である。ケアド人は血統で分類される大陸三人種のひとつ である。 大陸三人種とはすなわち:ミアナハ人、オルド人、ケアド人。 連邦人口の大多数はケアド人の血統だが、連邦に限っては派閥で分類する ことが多い。 王党派は月、反王党派は星に喩えられる。 煌めく星々はいくつも点在するが「月(王党派)」と名が付くものはひとつしかない。 月は昼間は見えないだけで元から天にあったもの、つまり人間の中に潜む「本能」 と考えられる。 一方、名も無きトレアン派は生まれたての未知なる「星々(トレアン派)」だ。 可能性と推進力を持つと共に、彼方に散っているため人々が手ずから集めなければならない。 それがトレアン派の行う「知識を集約し、新たなものを創り出す」 という意味だ。
連邦最大規模の派閥。筆頭は黒翼を信奉するゾイ王家。彼らの教義には善神・黒翼と悪神・白翼がおり、善神の洗礼を受けし現王家の統治を支持している。 彼らは「いずれ竜を討つだろう王党派血統こそ真の王族に相応しい」と考えるため、竜を同胞とする反王党派に厳しい目を向ける。主神は善なる大地神角メルギラ 。 礼儀正しく平和を好み、自然を愛する人々が多い(と自負している)。
王家は〔七角信仰〕の頂点にいる。同じくそれに属する王党派も神に仕えることを使命としている。 また政教一致を取る連邦において神官業を司るということは政へ関与することと同じ であり、政治も表向きは王党派に一任される。 このように王党派は明るく輝かしい世界であり、汚れ仕事に携わらないのが原則とされている。
表向き王党派の人間は反王党派に対して位階が上とされる。 しかし軍事力を握るのは反王党派。実質的に両者の権力関係はほぼ同等 となる。ゆえに王朝交代が頻繁に行われ、その度に首都と副都が目まぐるしく入れ替わった。 しかし後に議会制へ移行すると首都はルーナ=プラナ、副都はルーナ=ノア と以後変更のないよう決定が下される。 それは反王党派アリアドネ女王治世下である現在も変わらず、首都には今もってルアハの花が咲き乱れている。
第二規模の派閥として白翼を主神とする反王党派が存在する。筆頭は副都の軍事総監。ゾイ王家の統治に異議を唱える者が多数派。女王統治に賛同している人々も多い。主神は白き翼の天空神角フルティラ。 悪神に定める対象はおらず、すべての中で白翼が一番尊い、と認識している。よって黒翼=悪とはしていない。意外と寛容。 向上心と支配欲が強く知識に対して執着を見せる傾向が強い。 また魔法使用者が多いため、自らを「竜の力を行使する我々は優秀な人種である」と考え、王党派へ反発していく。
特殊能力の高さから軍事へ傾倒し汚れ仕事や暗殺業に携わる。 表向き王党派が政治を動かしているが、軍事を担うということは力を得ること、ひいては国庫を握ることへ繋がる 。 彼らは裏で脅しや軍事力をちらつかせて意のままに政治を動かそうとしてきた。
悪い側面ばかり目立つ反王党派だが、彼らこそ連邦発展の立役者 だ。 連邦の文化レベルが上昇した理由のひとつにガルという特殊魔法技術がある。それを使用し発展させたのは反王党派なのである。 なぜ彼らが? その疑問に答えは用意されていないが、彼らは十二分に国へ貢献してきた。だからこそ反王党派の人々は「我々は王位に就く権利がある」と主張する。
連邦国では「七角信仰」という拝一神教 が国の決議に関わってくる。 七角信仰とは、二匹の神角と五翼角を併せた、角を持つ七匹の神々を祀る宗教観 のこと。大昔に世界を管理していた古き竜を祀り、黒翼と白翼の二項対立を思想の中心へ据える信仰である。
本来、白と黒は「竜」そのものではなかった。しかし人は天上の存在を総じて「竜」と呼ぶことにした。該当思想の中で、黒と白は人の形を与えられ、それぞれ女神・男神と見なされる。 なお学都及び遊都は中立地帯であり、所属に関係なく議論を交わすことが許されている。
信仰七角 | 派閥 |
属性 |
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黒翼メルギラ | 王党派 | 善神・女神 |
白翼フルティラ | 反王党派 | 悪神・男神 |
大陸にはこれに類した宗教がいくつか存在する。・赤角ハームを崇めるミアナハ公国の赤角信仰 ・大陸そのものを崇めるケアド共和国の「大陸竜信仰」 ・竜が人の似姿を取ったとされる青年を崇める竜頭の「角笛信仰」 大陸に存在する宗教はケアド共和国が発祥であり凡て唯一つの思想から分岐した親戚関係にあるとみなされる。 しかし公国赤角信仰と連邦国九竜信仰は長らく対立。そのせいで公国では七角信仰は禁教 とされている。
七角の存在は大陸が衰退した暗黒時代以降久しく忘れ去られていた。 だがある時代、ケアド共和国の学者クイグ〈5〉が発掘した資料を再編 。のちの人々によって現在の拝一神教の形へ体系化された。 当初これらは信仰というより思想に近く、多彩な神が哲学や人生観を語り聞かせる寓話的要素が強かった 。神や竜そのものに善悪の定義付けはされていなかったのだ。 だが連邦国が黒翼を善神、白翼を悪神と定めると、現在まで激化している派閥争いの発端が築かれた。
かつて白き翼――男神信仰は異端だった 。 大陸が出来たばかりの頃、北東地域には「黒翼が白翼を粛清した」という伝承が広く信じられてたため、白翼を敬うことは御法度だったのだ。 しかし次第に黒翼メルギラが姿を消す。すると七竜信仰も段々と薄れゆき、いつしか竜の存在そのものが文献から消えていった。 これについてクイグは、「メルギラの、とある言葉が統治者達にとって都合が悪かったため人々が意図的に抹消した」と推論を立てている。
時は流れ、暗黒時代が訪れる。 この頃、民衆の間で黒翼メルギラ信仰がにわかに再熱した。人々は黒翼の言葉を無視したことを懺悔し悔い改めなければ、大陸が凍り付くと震え上がった。 こうして黒翼への信仰が復活すると、対となる白翼も掘り起こされた 。憎むべき我欲の代弁者として、善神が打ち倒すべき悪役として、フルティラを崇めることは再び異端とされた。 しかし彼は進化・科学を司る神でもある 。白翼の存在が蘇ることで古の高度な文明も蘇り、連邦は繁栄への道を歩み始めた。
政権交代と内乱はこの国の常だった。 すべての始まりはゾイ王家(王党派)だった 。 しかし魔法が生み出されると、それらを専門に扱う武家トレアン系民族 が勢力を強める。
連邦は政教一致政策を取る宗教大国だ。決議の指針は「七角信仰」、古き竜を中心とした宗教観に従い国政が定まる 。当国の歴史は古く、かつては黒翼メルギラを祀ったゾイ王家 による集権政治で成り立っていた。 いつしか〔黒翼・王党派〕中心の首都+六地域の分割統治 が始まるも〔白翼・反王党派〕勢力が台頭すると両派の王朝支配が交互に続く。 二つの勢力は拮抗し軍事力で劣る王家が弱体の一途を辿る中、他国の侵略により両派は妥協案として和平合意、五人の竜大伯による「議会」が発足 した。 これにより王家の政治的意義は急速に弱まる。
しばらくして侵略戦争の危機の中、再び王家主導の集権国家へ戻った連邦 だったが、度重なる戦いはいつの間にか軍事権を握る反王党派の権威を増大 させていた。 かくして腐敗した議会と反王党派による傀儡政治が始まり、アリアドネ姫の内乱を経てついに連邦史上初の絶対王政 が開始された。 結局、国王を否定する歴史を積み重ねた反王党派が勝利するも、頭目アリアドネ女王もまた「王家」を名乗り、最高権力を行使するようになったとはなんとも皮肉な結末である。
反王党派が力を付けると、宗教的な意義が強まり、神殿を預かる王家の存在が重要となった 。 対して反王党派も、七角の一人「白翼」を引き合いに出して現存権力へ対抗した。 彼らは徐々に王宮や黒翼派まで勢力を広めていったが先代・黒狼王レヴァンの前の時代から急速に内部腐敗が進む 。 それを愁うた王家が議会粛正を試み、議会を支配していた汚職層が払拭されるにつれ、王家も再び権威を取り戻していった 。 先代の黒狼王レヴァンはこれに乗じ、議会の地位を下げては地方権力を弱体化。侵略戦争へ迅速に対応するため強力な中央集権国家へ移行させ、他国と対等に渡り合う時代 が訪れた。 しかし議会や地方は未だにそれなりの力があり、当時は地方分権政治から中央集権政治への過渡期にあたる。 かくして力を奪われた反王党派による政権交代の気風が高まり、女王が誕生する切っ掛けを孕む大規模な反乱の土壌となった。
地方を治める五獣伯たちは長らく政治の片翼を担っていた 。二百年以上もの間、連邦政治は国王と議会の両輪で進められて来たのだ。 だがレヴァン先王以降少しずつ削れられていった議会の権威――それはアリアドネ女王が戴冠したことで完全に失墜した。
議会の力を奪われた者らは憤っていた。そこへ現女王アリアドネが反乱軍を募れば、議会内でも王家派と反乱軍派へ分裂。中でも一部の獣伯は王家を裏切りアリアドネへ迎合した。 しかし彼女が戴冠すると、女王は残るすべての特権を議会から奪い、絶対王政を築いた 。 当時、寝返って反乱軍へ加担した数人の竜伯は「北森」とよばれる監獄へ今も投獄されている。また元王家に従い続けた青・金・茶伯は城の中で幽閉状態 にあるという。
連邦において魔法技術ガルは、善神・黒翼信仰の頂点に立つ王族ないし神官だけが使用を許された 。 なぜなら「ガル」は白翼フルティラの力を借りた技術であり、悪の力が表面化したものである。そのため悪神の誘惑に打ち勝つことが出来る強い心を持つ者でなければ使用してはならない と信じられていたからだ。 しかし高度な技術が浸透し、利便性に国民が気付くと状況は一変した。技術独占に対する抗議運動が勃発したのだ。 権利を独占したい神官側。隣国ミアナハ神国が力を付けている時期に国内発展を妨げることを愚かと考えたゾイ王家。必然的に両者は対立した。 かくして国王が反対を押し切り技術の一般解放を行ったことで連邦は大いなる繁栄時代を迎えることとなる。
まもなくして神官達が恐れていた事態が起きる。民間の優れたガルの使用者こと「牙使い」達が自らの優越性を唱え暴走をはじめた 。 政府当局と対立した牙使いたちは自らの意見に説得力をもたせるため、また後ろ盾を得るために宗教的寄りどころ を求めた。 そこで悪神とされる白翼フルティラを引っ張り出し、異端の白翼信仰へ走った。かくして白翼フルティラは表舞台へ引きずり出された。
元暦xxx年、名君と知られた黒狼王レヴァンが反乱軍に謀殺された。 跡継ぎの長兄リガスはその数年前に内乱で死亡、次男ゲートも女王に位を奪われ投獄される。よって上から三番目の現女王が王位につき国内で迫害を受けていた末弟ミハリス第三王子を呼び戻した。 末弟はとある理由から国を出て大陸を旅して回っていたが内乱中も不在。彼は中立の立場を貫き反乱軍の誘いにも乗らなかった。しかし女王はかの末弟を愛していたため執拗に側へ置きたがった。 ――それが、大きな過ちだったと気付かずに。