一人称:我 二人称:貴様 象 徴:檻 綴 り:Enoch 黒翼メルギラの転生姿。種族としては「眷属」、生命を司る。 遙か昔より連邦国の北森地域に棲まう存在。眷属でありながら羽翼獣であり、連邦国では神に等しい「神角」と見なされる。黒翼と同一人物なので、黒牙族の血が濃いゾイ王家とは遠い親戚関係にある。 冷徹な物言いが目立つも、約束したことは義理堅く守る性格。 寡黙な一匹狼であるイーノクはかつて他生物との関わりを極力避けていた。 しかし今から数百年前、連邦国のある王と盟約を交わし、大監獄の監視役を請け負うようになった。 以来、政府に烙印を押された者を囲い独自の隔離地域を形成。かくして連邦国と北森は長きに渡り不干渉を保ち続けてきた。 しかし近年、その独立権を取り上げようと画策する白翼派である女王との間で確執を深めている。
囚人は森の中にいる限り自由である。 国王の権力が届かぬ独立地域ということは、囚人にとって一種の隔離施設。北森と外は特殊な力で遮断されており黒角の許可なく脱出することは不可能。自力で出入り可能な者は、黒角の恩寵を得た者、もしくは同等の力を持つ者だけだという。
黒きメルギラは大陸へ渡った後、大陸にて転生し、以降同地に居を構え続けた。 生命が存在出来ぬ地となった東翼暗黒紀での所在は明らかになっていない。が、恐らく当時も北森に居たと考えられる。
やがて東翼が温暖になり連邦国の基盤となった君主制小国が成立すると、彼は人の王と不可侵盟約を結んだ。連邦国内で弾かれ居場所を失った者をここに住まわせて欲しい、その代わり政府はこの地に手を出さない――そんな内容の約束だったという。 しかし口約束というのは時と共に移り変わるもの。国に居られない者、すなわち厄介者を投げ込む場所と認識されていった北森は、いつしか神角自らが罰する「大監獄」と呼ばれるようになる。 連邦国は政犯者や重罪人を好き好きに送り込み、北森は人で溢れていった。
連邦国が好き勝手に己が領地へ厄介者を送り込んでくる様をイーノクも黙って見ていた訳ではなかった。眷属はすべからく特異な力を持っているが、中でもイーノクはかつての黒翼であり、ことに力の強い黒角である。 その力を使って外へ出たいと願う者たちへ「恩寵」を与え、囚人を部下として秘密裏に行動させている。 ――犯罪人を外へ出して良いのか? そう疑問を呈する者もいるがイーノクに「人間の法」は通じない。連邦国にとっては「犯罪者」でもイーノクには連邦国の人間と同じ存在に過ぎないのだ。 こうしてイーノクは囚人達を味方に現在まで女王へ反抗し続け、一進一退で国家の不干渉を保っている。